2006-01-01から1年間の記事一覧
夢を、見ていた。 低い身長のくせに腕はしっかりしてて、彼に抱かれていると居心地が良くて多分これは信頼して良い部類に入るものなんだろうと頭のどこかで思う。戯れているというよりも、その存在を再確認させてくれるような、そんな意図が見える抱擁。時折…
風のある日は、好き。 春は、暖かな緑の香りが運ばれて。 夏は、太陽の光にとても似合って。 秋は、落ち葉がたのしそうに踊って。 冬は、冷たさの中に自然を感じて。 でもそれは、あなたと一緒だからこそ。 緑の丘に遊びに行って、 太陽の下ではしゃいで、 …
「じゃあね太乙、ばいばい」 君は、いつもそう言ってウチを出て行く。振り返りもしない後ろ姿に、手を伸ばしそうになってぐっと堪える私なんて、きっと君は知らないんだろうね。 「さて……私はそろそろ帰ろうかねぇ」 「え、もう? もう少しゆっくりしてって…
空は青くていい天気、飯盒の飯も美味かった。緑は目に鮮やかだし、時折、小鳥が鳴く声だって聞こえてくる。 そんな幸せ気分にひたりながら、道徳は傍らを振り返る。 「なぁー、そんな怒ってんなよー」 「……べっつにー」 長めの髪を一つに束ね、暑さにうだる…
暗闇。 鼻をつく、血液の金属じみた匂い。 また、あの夢。 でも目は覚めない。 ――――!! 何度も見てるのに、いつも驚く。 『太乙……』 人が倒れてる。 それは、知人。 否、友人。 否、大切な人。 そう、清虚道徳真君。 『助けて……くれ……』 どう……とく……。 口…
朝、雨音で目が覚めた。 「んー……雨かぁ……」 普段滅多に雨なんて降らないから、私はいつもと違う事をしてみたくなった。 今日は一切宝貝を作らないことにする。 ゆっくりと、丁寧にお茶を淹れる。 戸棚から菓子を出してきて、テーブルに投げ出されていた雑誌…
「なんでこんなに穏やかなの?」 唐突な道徳の問いに、太乙は戸惑った。素肌で感じる道徳の体温に、うとうとしかけていたのに。狭い床の中は、暖かくて心地よい。 「はぁ……? 何言ってんのさ」 「心音だよ。55拍/mってトコ……」 人の胸に顔を埋めて、何を…
まるで、音のない世界のようだった。 私の傍には、寝息を立てる君。 ただそれだけ。私は、眠れなかった。 夜遅くまでうちの実験室を使っていた太乙。 泊まっていくかと冗談交じりで聞いたら、君は寝ぼけたまま応と答えたのだった。 ただ、それだけ。 朝もや…
道徳、明日は暇? 良かったら金光洞へおいでよ。 一緒にお茶でも飲もう。 You got a mail. 部屋で筋トレをしていたら、ピロリロリンと軽やかな音。パソコンを見てみたら、そんな新着メッセージがあった。差出人はTaiitsu。太乙からの誘いだ。 それを見た…
「道徳〜! 君にだよ」 太乙がにこにこ顔で嬉しそうに。手には勿論、綺麗な包み。シンプルだけど少し光沢のある包装紙に主張しすぎでないリボン。持ってみると少し重めで、もちろんこの中身は分かっている。こんなものが無くても、愛情なんていつも与え、そ…